夕焼けの朝

ある夕焼けの朝
君は寝床をたって僕を起こす
崖っぷちの小さな小屋
沈みゆく太陽を背に僕らは家をでた

足早に帰る人々
全てはゼンマイ仕掛けのおもちゃ
君の瞳には映るけど
何も見ていないんだね

僕は君の手を引いた
彼らをよけて歩いた
おはようも無く
いってらっしゃいも無い

隣の黒猫に会ったけど しらんぷり
あれはあんたの影だったのかい

君のきれいなベール
月下の蒼い闇に白く輝く
いつのまに ここまで来たの
大きな岩の先で氷の月が眠る

森の小さな守人
ありのままの世界を唄う声
君の耳には届くけど
何も聞いてないんだね

君が僕の手をはなす
いかないでというこの声も
君の前ではただの空気
さよならも無く ただ震える

鏡の泉の前
紅い月が水面に浮かぶ
僕はそれを引き裂いた
冷たい秋の水の空
ただ僕はそれに向う

あるはずもない朝を探して
いるはずもない君の手を引いて